「この世の仕事と伝道」

A. 「ロンドンデリーの歌」

 「ロンドンデリーの歌」として日本でも親しまれているアイルランド民謡は、日本の教会でも、讃美歌第二編157「この世のなみかぜさわぎ」として歌われています。「悔い改め」をテーマにした祈りの歌として相応しい、心打つ旋律です。
 キリストの贖いがあるから、悔い改めは、悲しく美しいものです。この悔い改めによる救いを多くの人が受け入れたのは、学問の町アテネではなく、不道徳な町として知られていたコリントの人々でした。

B.聖書より

(2)ここで、ポントス州出身のアキラというユダヤ人とその妻プリスキラに出会った。クラウディウス帝が全ユダヤ人をローマから退去させるようにと命令したので、最近イタリアから来たのである。パウロはこの二人を訪ね、(3)職業が同じであったので、彼らの家に住み込んで、一緒に仕事をした。その職業はテント造りであった。使徒言行録18章2〜3節
 福音を信じる人が少なかったアテネから、パウロは一人、落胆してコリントに到着しました。彼は、その時の思いを「そちらに行ったとき、わたしは衰弱していて、恐れに取りつかれ、ひどく不安でした」(コリント第一2:3)と記しています。そんなとき、最も励みになるのは、同じ立場の人との出会いです。
 アキラは、パウロと同じユダヤ人で、テント造り(日除けとか幕)を本業としていたクリスチャンでした。パウロはラビ(教師)でしたが、当時の学者やラビは、自分で働き、生計を立てる慣習がありました。ラビたちは現実離れした学者ではなく、働く人の生活がどんなものであるかを知る必要があったのです。パウロも天幕造りの熟練した職人であり、誰にも負担をかけなかったことを自負していました。
働きながら、自分で生計を立てて、自分のできる範囲で伝道しようとしていると、必ず協力者が神さまによって与えられます。ここにパウロのとった伝道の知恵があり、伝道者は、この知恵を学ばなければならなりません。一方、この世の仕事に従事する人も、仕事に誇りを持ち、機会あるごとに福音を宣べ伝えましょう。それが、神の国とこの世との橋渡しをすることになるのです。

C.上方落語による伝道(福音落語)―露のききょうさん

 クリスチャン落語家の故・露の五郎のお嬢さんが、2009年に洗礼を受けてクリスチャンとなり、福音落語を引き継いでおられます(双子の姉妹は牧師夫人)。神さまが天地の創造主であり、人間がその神に背を向けていることが罪であり、イエス・キリストの購いによって救われるという、教理の基本を落語で語るのです。福音落語とは、キリスト教のことを、楽しく分かってもらえるように、落語仕立てにしたものです。「人は笑うと、心が開放的になると思うのです。笑いながら心を閉ざすことはあまりないので、笑って、心を開いた状態にした所に、福音の種まきができるというのが福音落語の良いところだと思います」とききょうさんは語ります。彼女はプロの落語家としては、福音落語を語るただ一人の存在です。外国の宗教という印象が強いキリスト教も、福音落語で耳にすることで、日本人にとって妙に身近に感じられ、救いの概念が心に残るものです。
 伝道を専門としない一般信徒の、職業を通した証しは、福音伝達の貴重な手段なのです。

D.結び

 罪を公に告白している人こそ、イエス様をよりよく受け入れられます。
 この世の仕事にも誇りを持ち、機会あるごとに福音を宣べ伝えましょう。それが、神の国とこの世との橋渡しとなるのです。
 御翼2010年11月号その1より

 
  
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